【書評】話を聞く術について事細かに研究した書。聞くことに対する悩みが解決されることでしょう。
掲載日:evenbetter さん
https://www.honzuki.jp/book/287624/review/244111/
本書ではタイトルのとおり、話の聞き方についてのテクニックが網羅されています。著者の渡辺直樹さんは、通信会社のコールセンターでの電話応対経験や傾聴ボランティアなどで7万人もの話を聞く経験を積んできたとという。また、大学で心理学、臨床心理学、カウンセリングを学び、本書ではそういった観点から、聞くという行為を分析されています。
書籍化にあたっては、コールセンターで働くオペレーター向けに話の聞き方のポイントをまとめていた資料が元になっているとのことで、場面別にテクニカルな内容にもなっています。
本書を読んで最も重要だと思ったことは、聞く方法は自分のメンタルコントロールから始まるということです。つまり相手の話の内容や感情につられて自分の感情を動かさないということでしょう。
例えば、相手から「あんたたちって使えないね!」と言われた場合、私たちには怒りの感情が生じてしまいがちです。しかし、そうではなく、その感情を事実として捉えるとともに、共感してあげることで相手の感情がおさまり、建設的な会話ができるようになります。
また、渡辺さんは聞き下手にとって悩ましい相づち問題にも答えを提示しています。その名も「はふへほ相づち」と「ペーシング」。前者はゆったりとしたタイミングで「はあい」と相づちを打つことで相手の話をこちらが聞き取りやすいペースに持ち込む技術です。
後者は逆に相手のペースに合わせて相づちを打つことで相手に共感されているという感覚を持たせることができる技術だそう。
他にも、
・「なぜ」「どうして」はなるべく使わない
・話し手そのものに注目すべきという心構えを暗喩した逸話「毒矢を放った者は誰か」
など聞き方の極意から細かなテクニックまで伝授されています。
聞くという一見、受動的な行為を能動的な行為に変えることでより良い会話力を磨くことに本書は役に立つでしょう。