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ヒーリング・フォレスト~物語と癒しの森から~

心理カウンセラー・執筆家による気づきと悟りへのメッセージ

自分のネガティブを武器に戦う

ある女性から、私がなぜ心理学を専門に学んだのかきかれたことがあります。


彼女も中学の頃に心理学に興味を持ち、ユングフロイトなどの文献を読みあさって、大学も心理学を志望したものの失敗し、その後しばらく忘れていたようですが、いまの仕事でカウンセラーと接する機会などもあって、まだ興味を捨てきれていない。そこで私がどんなきっかけで心理学を専門に学んだのか知りたいとのことでした。


そのときは時間もなく「それが道だったから」とだけお答えしました。そして、彼女もかつて心理学に興味を持って、現在も何らかの形で少なからず関わっているとしたら、それも彼女にとって道なのかもしれません、とお話しました。


道というのは、その人がいつのまにか、知らず知らずのうちにたどっていて、やがて行きつくライフワークのようなもの、あるいは生きていくなかでいろいろな局面で現れたり、いつまでも付きまとうものですが、私の場合、この道らしきものが、思い返せば10代の頃から現れ始めていました。


ただ、それは才能というものではなく、私の欠点、ネガティブな点として現れました。


私は幼い頃から、人と比べて物事を考えすぎる傾向がありました。君はあまりに考えすぎる、そう言われてきました。


高校へ行って文学や哲学に夢中になる頃から、生きる苦しみといったものに過敏になって、しまいにはノイローゼになるほどでした。


受験にも失敗して、日常生活をするにも困難さを感じながら、なんとか予備校に通う日々を過ごしていました。受験勉強には実が入らず、英語で記された海外の小説や哲学書を原書のまま片っ端から読みふけって、何か答えを見つけようとしていました。


そんなとき、人生を変える一冊の本と出会います。今となってはそれが、自分の道を指し示すものだったように思われますが、ある大学教授が自分のノイローゼと向き合って、やがて克服していくという手記でした。その本では、一人の日本人が考案した、世界的に有名な心理療法、「森田療法」が紹介されていました。


そのセラピーは、日本に古くから伝わる禅とか、東洋哲学などを根本にした心理療法で、たまたま似かよったジャンルの本ばかり読んでいた私は、比較的早く理解できました。すでに私の知らないところで、何かの準備が着々と行われていた、そんな感じを持ったものです。


そして私は自分の心と向き合うようになります。ここまで読んでいただいておわかりの方もいるかもしれませんが、私の最初の心理カウンセリングの相手は、「自分」だったのです。


心理学を専門に学ぶために、私はまず自分のノイローゼを直さなければならなかった、克服しなくてはならなかった。


その後、私は大学で臨床心理学なるものを専門に学んで、その道へ進むことになります。


欠点とか、ネガティブと思われがちなことにも、その人の長所、メリットが隠れているものです。


私の知人に、ずっと体型にコンプレックスを持ってきた人がいますが、それは人よりも肉体に対する美意識が高いことのあらわれで、いま彼女はヨガのインストラクターの資格を目指しています。


またいつも落ち着きがなかった人は、ありきたりの人生や生活では満足できずに起業家として成功したり、授業中に人と話してばかりで注意されていた人は、アナウンサーやセミナーリーダーとして活躍したり、そんな人を私は何人も見てきました。


自信のない人だからこそ、自信のない人の心を理解する才能があり、ノイローゼになった人だからこそ、ノイローゼや神経症の悩みを理解することができる。


「道ならば開ける」という言葉を、私はかつての先生から教わりました。いくらその人がやりたいことでも、道でなければどうしてもその道に進むことはない。またいくらその人がやりたくないことでも、それが道ならば、いくら避けたり忘れたりしても、人生のいろいろな局面であらわれたり、いつまでも付きまとったりして、けっきょく関わらざるをえなくなる。


そう考えると、どんな人も役割を持ってこの世に来ているといわれますが、自分の役割とは何なのか、さほど深刻に悩まなくても、どんな人も進むべき道を進んでいると思えて、安心すらできるかもしれませんね。


自分の欠点とか、ネガティブと思われがちなことには、あなたしか持っていない最強の武器が隠されている、という話でした。

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